まぼろしテンダー
「なんで木から降ってくんだよ。猿かよ、テメー」
至近距離で睨まれて、完全に固まる私。かなり、というか、相当怒ってる。そりゃそうだ。上から人が降ってきたら誰だってキレる。
……でも。
でもさ。
この人もこの人で、なんで休み時間中に、こんなところにいるのか分からないんだけれど?
こんな、なにもない場所に。木と花壇があって、その奥に裏口がぽつんとあるだけの場所に、どうして人がいるのか理解できない。
「お前、名前は?」
ちょっと待って。頬、まだ掴まれてるんですけど?これじゃちゃんと喋れないんですけど?
そう思って、思いきりキッと睨んでやる。するとそれに気づいたのか、男はふっと不機嫌そうに眉をひそめて、ようやく私の頬から手を離した。
解放された頬をさすりながら、改めて相手の顔を見る。
さっきは完全にうつ伏せになってたけど、血も出てないし、どこか痛がってる様子もない。
どうやら大きな怪我はなさそうだ。もし骨折とかしてたら……慰謝料とか、ほんとにシャレにならない。