蝶よ花よ、あこがれに恋して


おかげで出勤の二時間前に起きて、必死で可愛いをつくる、そんなルーティンが完成されてしまった。前髪を束にセットして、耳の辺りでくびれを作るべくウェーブする。

今日はいつもより上手に出来てうれしい。束感まつ毛もナチュラルな陰影も、涙袋もとっても上手につくれた。

「あ!時間……!」

あわててパンプスにつま先を潜らせ、いつもの時間に家を出た。

マンションの玄関を出て植え込みがある曲がり角を曲がると、ある人物が向かいのマンションから出るタイミングと同じだった。胸がほわほわとした気持ちで満たされていくのを感じた。

「(今日も会えた……!!)」

目から与えられた幸せを噛み締める。毎朝たった10秒会える男の人。柔らかそうなゆるいパーマヘアと、淡いベージュ色の髪の毛。きゅっと尖った小鼻。色白の肌と中性的な顔立ちは、アンニュイな雰囲気を醸し出している。

イケメンと言われる要素、役満の彼が私の元気の源。簡単な恋愛しか経験のない私が彼に落ちるのはとても簡単な原理で、それ以降、勝手にあこがれを抱かせてもらっている。

ただ、向かいのお部屋に住むイケメンは、時々生態がなぞだ。
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