きっと、今の僕でも君の手をつかめない。

プロローグ

 思い出したのは、いったい何年ぶりだろうか。
 ずっと考えたこともなかったのに、なぜか夢で見てしまった。
 理由は分からない。
 あの頃と比べてずいぶんと年輪は刻んだが、走馬灯という訳ではない。あちこちと痛んではいるが、まだまだ故障して動かないという状態ではない。だからこそ、不思議に思うんだ。なぜ、今さらあの時の夢を見たのか、と。

 確かに後悔はある。
 周囲が見えなくて、何も分からなかった。
 相手の気持ちを考えもせず、自分の思いを押し付けた。
 今となっては分かることも、あの頃は少しも見えていなかった。
 心に残り思い出ではあるけれど、最後に思い出したのはもう何年ぶりかも分からない。また会えたらと、奇跡的な再会がないかと願っていた時期もある。最後に噂を聞いたのは、どこかの誰かと結婚したという話だった。


 ああ―――――
 もし、今の自分が、あの頃の自分と入れ替わることができたら、もっと違う結果になっていたのかも知れない。
 もしかすると、自分が一番望んでいた結果になっていたのかも知れない。


 あの日、偶然が重なって乗ることになった最終電車。
 たった一つでもタイミングが違っていたら、あんなに人を好きになることも、あんなに苦しむこともなかっただろう。


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