元彼が職場の後輩に!?
第2話 業務上の会話は、業務だけでいい
朝倉が編集部に来て、三日が経った。
私は徹底的に距離を取っている。
会話は業務上の話題だけ。それ以外は、極力関わらないようにしている。
昼休みは外に出るか、給湯室で時間を潰す。屋上には行かなくなった。朝倉がいるかもしれないから。
退勤時間も、わざとずらしている。朝倉より早く帰るか、残業して遅く帰るか。エレベーターで二人きりになるのだけは、絶対に避けたかった。
我ながら、子供じみているとは思う。
二十九歳にもなって、元恋人を避けて逃げ回っている。
でも、そうするしかなかった。
「結城さん。この企画書、確認お願いします」
朝倉が私のデスクにやってくる。
教育係だから仕方がないのだ。仕事の質問には答えなければならない。
「……どこ?」
「三ページ目のコスト試算のところ。これで妥当かどうか」
企画書を受け取り、ざっと目を通す。
外部ライターへの発注費、撮影費、デザイン費。新人にしては、よくまとまっている。営業企画にいただけあって数字の感覚は悪くない。
「概ね問題ないけど、撮影費の見積りがちょっと甘いかな。このロケ地だともう少しかかるかもしれないわ」
「具体的にはどのくらいですか?」
「二割増しくらいで見積もっておいた方がいいと思う。あと、予備費が入ってないかな」
朝倉がメモを取る。真剣な横顔。
視界に入れないようにしていたのに、つい見てしまった。
「わかりました。修正して、また持ってきます」
「……うん」
それだけのやり取り。
朝倉が自分の席に戻っていく。私は、止めていた息をそっと吐いた。
大丈夫。仕事だけなら、まだやっていける。
感情を挟まなければ問題ない。
私は徹底的に距離を取っている。
会話は業務上の話題だけ。それ以外は、極力関わらないようにしている。
昼休みは外に出るか、給湯室で時間を潰す。屋上には行かなくなった。朝倉がいるかもしれないから。
退勤時間も、わざとずらしている。朝倉より早く帰るか、残業して遅く帰るか。エレベーターで二人きりになるのだけは、絶対に避けたかった。
我ながら、子供じみているとは思う。
二十九歳にもなって、元恋人を避けて逃げ回っている。
でも、そうするしかなかった。
「結城さん。この企画書、確認お願いします」
朝倉が私のデスクにやってくる。
教育係だから仕方がないのだ。仕事の質問には答えなければならない。
「……どこ?」
「三ページ目のコスト試算のところ。これで妥当かどうか」
企画書を受け取り、ざっと目を通す。
外部ライターへの発注費、撮影費、デザイン費。新人にしては、よくまとまっている。営業企画にいただけあって数字の感覚は悪くない。
「概ね問題ないけど、撮影費の見積りがちょっと甘いかな。このロケ地だともう少しかかるかもしれないわ」
「具体的にはどのくらいですか?」
「二割増しくらいで見積もっておいた方がいいと思う。あと、予備費が入ってないかな」
朝倉がメモを取る。真剣な横顔。
視界に入れないようにしていたのに、つい見てしまった。
「わかりました。修正して、また持ってきます」
「……うん」
それだけのやり取り。
朝倉が自分の席に戻っていく。私は、止めていた息をそっと吐いた。
大丈夫。仕事だけなら、まだやっていける。
感情を挟まなければ問題ない。