給食のおばちゃんのひみつ
第一話
「今日の給食、また残したでしょう」
放課後、給食室の前を通りかかったとき、給食のおばちゃんと呼ばれてみんなから親しまれて
いる栄養士の高田先生の声が聞こえた。ぼくは足を止めた。
「好き嫌いはいけませんよ。せっかく作ったのに」
高田先生は三か月前に赴任してきた。いつもニコニコしていて、給食もとてもおいしい。でも、最近おかしなことに気づいた。
クラスの友達が一人、また一人と学校を休むようになったのだ。
最初は河野くんだった。給食を残した次の日から、ずっと学校に来ていない。次は佐藤さん。彼女も給食をよく残していた。そして昨日、親友の山本くんまで――。
「明日からは残さず全部食べてくださいね」
高田先生の声が、やけに明るく響く。
ぼくは震える手で給食室のドアに手をかけた。わずかに開いた隙間から、中が見えた。
大きな鍋がいくつも並んでいる。その一つの蓋が開いていて、中から湯気が立ち上っている。近づいて覗き込もうとしたそのとき――
「あら、誰かしら?」
高田先生だ。心臓が止まりそうになった。
「ご、ごめんなさい。忘れ物を...」
「そう。気をつけて帰りなさいね」
高田先生は相変わらずニコニコしている。でも、その目は笑っていなかった。
翌日の給食は、ぼくの大好きなカレーだった。でも、いつもと何かが違う。匂いも、味も。
「どうしたの? 食べないの?」と隣の席の女子が聞く。
ぼくは震える手でスプーンを置いた。カレーの中に、何か硬いものが入っていた。取り出してみると――
それは、小さなボタンだった。山本くんがいつもつけていた、サッカーボールの形をしたボタン。
「残しちゃダメよ」
振り返ると、廊下側の窓から高田先生がこちらを見ていた。その笑顔が、今日はいつもより大きく見えた。
ぼくは必死にカレーを口に運んだ。涙が止まらなかった。
明日、学校を休んだら――ぼくも、給食の材料になってしまう。
放課後、給食室の前を通りかかったとき、給食のおばちゃんと呼ばれてみんなから親しまれて
いる栄養士の高田先生の声が聞こえた。ぼくは足を止めた。
「好き嫌いはいけませんよ。せっかく作ったのに」
高田先生は三か月前に赴任してきた。いつもニコニコしていて、給食もとてもおいしい。でも、最近おかしなことに気づいた。
クラスの友達が一人、また一人と学校を休むようになったのだ。
最初は河野くんだった。給食を残した次の日から、ずっと学校に来ていない。次は佐藤さん。彼女も給食をよく残していた。そして昨日、親友の山本くんまで――。
「明日からは残さず全部食べてくださいね」
高田先生の声が、やけに明るく響く。
ぼくは震える手で給食室のドアに手をかけた。わずかに開いた隙間から、中が見えた。
大きな鍋がいくつも並んでいる。その一つの蓋が開いていて、中から湯気が立ち上っている。近づいて覗き込もうとしたそのとき――
「あら、誰かしら?」
高田先生だ。心臓が止まりそうになった。
「ご、ごめんなさい。忘れ物を...」
「そう。気をつけて帰りなさいね」
高田先生は相変わらずニコニコしている。でも、その目は笑っていなかった。
翌日の給食は、ぼくの大好きなカレーだった。でも、いつもと何かが違う。匂いも、味も。
「どうしたの? 食べないの?」と隣の席の女子が聞く。
ぼくは震える手でスプーンを置いた。カレーの中に、何か硬いものが入っていた。取り出してみると――
それは、小さなボタンだった。山本くんがいつもつけていた、サッカーボールの形をしたボタン。
「残しちゃダメよ」
振り返ると、廊下側の窓から高田先生がこちらを見ていた。その笑顔が、今日はいつもより大きく見えた。
ぼくは必死にカレーを口に運んだ。涙が止まらなかった。
明日、学校を休んだら――ぼくも、給食の材料になってしまう。


