好きです、先輩。別れてください
俯いていた視線が、自然と上がって猫葉くんを見る。
猫葉くんは、いつしか見た、あのニヤッとする笑みを浮かべていた。あのときよりは優しげな顔で。
「最後だけ、許して?」
ぐいっと腕を引かれて、一瞬で猫葉くんの腕の中。
びっくりして涙も引っ込んだ私に、猫葉くんは何を思っているんだろう。
私を抱きしめたまま、猫葉くんは言葉を紡ぐ。
「私なんか、なんて思わないでよ。……桜庭さんはすごく魅力的な人だよ」
「っ、…ありがとう」
「他のやつに取られるのは癪だけど、桜庭さんが幸せならいいかなって思うよ」
猫葉くんはそこまで言って私から離れた。
抱きしめる前とは少し違う、寂しそうな笑顔をして。
「猫葉く───」
「ばいばい」
背を向けた猫葉くんを、引き止めちゃいけないと思うけど、これだけは。
「猫葉くんっ!私を好きになってくれてありがとう、嬉しかった!」
「俺も、桜庭さんのこと好きになってよかった」
振り返らずに声だけで返事をしてくれた猫葉くん。どんな表情をしているのかはわからない。
でも、伝えたかったことは伝えられた。
いつかちゃんと、友だちとして笑い合えていたらいいな。