好きです、先輩。別れてください
猫葉くんSide
桜庭さんが幸せならいい。
その言葉の全部が嘘だったなんて言わないけど、本当はさ。
「俺と幸せになって」
ぼそっと呟いた言葉が、何の嘘もない心からの言葉なんだよ。
桜庭さんに直接言えない俺は、臆病者だけど。
「なんで今なんだよ」
人通りはあまりない帰り道に、なぜかあるお店の電光掲示板は、星谷 楓茉の映画の宣伝を映していた。
俺が今、いちばん見たくない顔。ただの八つ当たりだけど。
───それでも立ち止まったのはなんでだ。
「もしかして、君って猫葉くんって人?」
「はい?」
名前を呼ばれて後ろを振り返った瞬間、目に入るのは深く帽子を被っていてもわかる、アイドル顔負けの整った顔。
運命的な巡り合わせがあるなら、それをあんたには使いたくないな、星谷先輩。
てか、なんで俺のこと知ってんだよ。
「あっ、俺は怪しいやつじゃないよ?同じ高校の───」
「若手俳優、星谷 楓茉。……あと、桜庭さんの元カレ、ですよね?」
「あ〜、はんちゃんに聞いたの?……てことは、よっぽど信用されてるんだね」
やっぱりそうか。
薄々、気づいてはいたんだ。桜庭さんの元カレはきっとこの人だって。
よく、仁那に星谷 楓茉の話をしていたのに、いつからかしなくなったから。
だから、信用とは別。
それに、桜庭さんが恋してる相手のこの人に言われても全然嬉しくない。
俺に向けてるその笑みも、余裕があるからってこと?