記憶の欠片
 その後、おみくじを引いた。

 私は小吉だったけれど、明日香ちゃんは大吉。

 嬉しそうに笑う姿を見て、つられて私も笑った。

 私と明日香ちゃんは、境内の奥にある小さな恋みくじの所へ歩いて行った。

 冷たい冬の空気が頬に触れ、息が白く上がる。

 手袋越しに両手をこすり合わせながら、少しはしゃぐ気持ちを押さえつつ、私は心の奥で少しだけ緊張していた。

 だって、まだ心の中にはあの人のことが残っているのだから。

 小さな木の筒を振ると、カランと音が鳴る。

 中から紙を引き出すと、そこには「大吉」と書かれていた。

 明日香ちゃんも同じく大吉。

 二人同時に笑って顔を見合わせると、なんだか自然に胸が温かくなる。

 振られたばかりの私には、この結果はまるで背中をそっと押してくれるようだった。

 まだ諦めなくてもいい——そう、心の奥で小さな光が芽生える。


「冬休みが終わったら、慧くんと、いいことがありますように……」


 小さな声で呟くと、明日香ちゃんは柔らかく頷き、私の手を握って笑った。

 その笑顔は、いつも私を支えてくれる明日香ちゃんらしくて、なんだか心の荷物が少し軽くなった気がする。

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