記憶の欠片
 私は、はっきりと思い出してしまった。

 胸の奥に沈めていた記憶が、夜空に浮かぶ星みたいに、ひとつひとつ光を取り戻していく。

 すっかり忘れていた——いや、忘れたふりをしていただけだった。

 あの日、星に託した願い事。

 「また二人で見ようよ」と、確かに交わした約束。

 慧くんと並んで、ただひたすら煌めく星を眺めて、夜が白み始めるまで語り合っていた日々。

 寒さに肩を寄せ合って、眠くて、でも帰りたくなくて、空が少しずつ色を変えていくのを黙って見ていた。

 あの時間は、確かに私の人生の一部だった。

 さっき流れた、あの一瞬の輝く星。

 胸が強く締めつけられたのは、偶然なんかじゃない。

 あれは——慧くんと一緒に見なきゃ、意味がない。

 彼はもう、この約束を忘れてしまったかもしれない。

 時間が流れて、たくさんの出来事があって、想いがすれ違って。

 忘れてしまうには、十分すぎるほどの年月があった。

 それでも。

 それでも私は、思い出してしまった。

 あの夜の温もりも、手を握った感触も、星に願った「また」という言葉も。

 だから、一度でいいから。

 もう一度だけでいいから。

 慧くんと、同じ空を見たい。

 同じ星を見上げて、同じ瞬間に息をのんで、同じ光を心に刻みたい。

 それが叶わなくてもいい。

 拒まれても、すれ違ってもいい。

 でも——あの約束を、私の中だけの思い出にして終わらせるのは、まだ早すぎる。

 夜空を見上げながら、私は静かに決めていた。

 この想いから、もう逃げない。
< 151 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop