記憶の欠片
〈記憶の欠片 約束〉

 六年間通った見慣れた景色。

 オレンジ色に染まった住宅街の坂道。

 小学校を卒業した私は、妹と弟、そしてお母さんと一緒に帰路についていた。


 「姉ちゃん」


 私の右隣を歩いているのは、私より少し背の高い少年。


 「どうしたの、怜桜(れお)


 お母さん譲りの黒い艶のある髪が夕日を反射している。


 「姉ちゃんは中学生になったら何部に入る?」


 「えー全然考えてなかったなぁ。怜桜はもう決めてるの?」


 私の弟、怜桜は小学五年生で一つ年下。

 周りの男の子達より、少し大人びていて綺麗な顔立ちをした弟。

 その顔は、お父さんの面影を感じさせる。

 筋の通った鼻、少し切長で夜の空みたいに黒い目。

 なのに中性的な顔立ちで、幼さも感じさせる。

 …お父さんは事故でなくなった。

 私がまだ小学三年生の夏の頃だった。

 その事故を境に、弟は小学生らしい無邪気さを隠し、大人に近づいた。


 「俺さ音楽勉強して、それで稼いでいきたいんだ。お父さんみたいに上手くは歌えないけど俺、誰かの心を動かせれるような歌を届けたい」


 「凄いね、怜桜は。私なんて全然将来の目標とかも無いのに」


 「今日の式でさ、姉ちゃんハープ引いてたじゃん。あれ凄い上手だったよ」


 怜桜が私の目を見て微笑む。


 「吹奏楽部とか入ってみたらどうかな。姉ちゃんの演奏、もっと色んな人に聞いて欲しい」


 「ホントに?私、頑張ってみようかな」


 私の言葉を聞いて、お母さんもにこにこ微笑む。


 「愛梨、怜桜。みんなには悲しい思いさせちゃってるけど、みんながやりたいこと出来るように、お母さんも頑張るからね。変に遠慮せず、好きなことはどんどん挑戦していきなさい」


 その言葉を聞いた私と怜桜は目を合わせて、頷き合う。


 「姉ちゃん、約束。俺音楽頑張るから、姉ちゃんも好きなこと全力で頑張れ!」


 その言葉と共に差し出された小指。


 「もちろんだよ」


 私は満面の笑みで怜桜と小指を重ねた。

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