記憶の欠片
雨音が、今の世界に戻ってくる。
肩に、何かが掛けられていた。
カーディガン。
雨に濡れたはずなのに、ほんのり柔軟剤の匂いがする。
……三湊くんのだ。
そう思った瞬間、胸の奥が静かに温かくなった。
体を起こして、後ろを振り向く。
そこには、彼がいた。
大きな木の下で、ぼうっと雨を見つめている。
車一台通らない道路。
人の気配もない。
世界は、雨音だけで満たされていた。
「……三湊くん」
名前を呼ぶと、彼ははっとしたようにこちらを見た。
「……!」
驚いた顔。
それから力が抜けたみたいに、表情がほどける。
「良かった……」
そう言って、心から安心したように笑った。
胸が、きゅっと鳴る。
「私たち……」
私は、静かに口を開く。
「昔、出会ったことがあったんだね」
彼は小さく頷いて、問いかける。
「思い出した?」
私は一瞬言葉を探してから、ぽつりと答えた。
「私……記憶を失ってるんだ」
雨音に紛れそうな声。
「今……三湊くんとの記憶、思い出したの」
彼は、少しだけ目を見開いてからゆっくりと口を開いた。
「……そっか」
そして、前よりも柔らかい声で言う。
「何があったのかは分からないけど…」
彼が一度口を閉じる。
「困ったことがあったら、なんでも言えよ」
一歩、距離が近づく。
「俺が、助けてやるからさ」
雨に濡れた彼は、昼間よりもずっと艶やかで、目を離せなかった。
か、かっこいい…。
私は思わず顔を逸らす。
なのに、頬が、熱い。
「……そろそろ帰るか」
三湊くんは、そう言って歩き出した。
私も、少し遅れて隣に並ぶ。
雨の中を、二人で歩く。
足音と、雨音だけが重なって、さっきまでの嵐みたいな記憶が少しずつ遠ざかっていく。
でも。
肩に残るカーディガンの温もりと、隣を歩く彼の気配だけは確かにここにあった。
——きっと、この再会は、偶然なんかじゃない。
そう思いながら、私は静かに前を向いた。
肩に、何かが掛けられていた。
カーディガン。
雨に濡れたはずなのに、ほんのり柔軟剤の匂いがする。
……三湊くんのだ。
そう思った瞬間、胸の奥が静かに温かくなった。
体を起こして、後ろを振り向く。
そこには、彼がいた。
大きな木の下で、ぼうっと雨を見つめている。
車一台通らない道路。
人の気配もない。
世界は、雨音だけで満たされていた。
「……三湊くん」
名前を呼ぶと、彼ははっとしたようにこちらを見た。
「……!」
驚いた顔。
それから力が抜けたみたいに、表情がほどける。
「良かった……」
そう言って、心から安心したように笑った。
胸が、きゅっと鳴る。
「私たち……」
私は、静かに口を開く。
「昔、出会ったことがあったんだね」
彼は小さく頷いて、問いかける。
「思い出した?」
私は一瞬言葉を探してから、ぽつりと答えた。
「私……記憶を失ってるんだ」
雨音に紛れそうな声。
「今……三湊くんとの記憶、思い出したの」
彼は、少しだけ目を見開いてからゆっくりと口を開いた。
「……そっか」
そして、前よりも柔らかい声で言う。
「何があったのかは分からないけど…」
彼が一度口を閉じる。
「困ったことがあったら、なんでも言えよ」
一歩、距離が近づく。
「俺が、助けてやるからさ」
雨に濡れた彼は、昼間よりもずっと艶やかで、目を離せなかった。
か、かっこいい…。
私は思わず顔を逸らす。
なのに、頬が、熱い。
「……そろそろ帰るか」
三湊くんは、そう言って歩き出した。
私も、少し遅れて隣に並ぶ。
雨の中を、二人で歩く。
足音と、雨音だけが重なって、さっきまでの嵐みたいな記憶が少しずつ遠ざかっていく。
でも。
肩に残るカーディガンの温もりと、隣を歩く彼の気配だけは確かにここにあった。
——きっと、この再会は、偶然なんかじゃない。
そう思いながら、私は静かに前を向いた。