記憶の欠片 Original

 昼休憩。


 教室には、弁当の包みを開く音や、笑い声が広がっている。


 窓から入る風は、もう春より少しだけ暖かい。


 私は何気なく、机の上に置いた筆箱を手に取った。


 ——あれ?


 指先が、いつもの感触に触れない。


 筆箱のファスナーの横。


 いつも揺れているはずの、あの小さな重み。


 「……ない」


 心臓が、どくんと鳴った。


 ガラスの小瓶に入った、星の形をした三つの宝石。


 無くしてはいけない、大切なキーホルダー。


 私は慌てて筆箱を持ち上げ、机の周りを見回す。


 椅子の下。


 鞄の中。


 ——どこにも、ない。


 胸の奥が、ざわつく。


 教室の中で響く音の全てが、急に遠くなる。


 落とした……?


 私は立ち上がり、前の時間に使った場所を思い出す。


 ——図書室だ。
< 24 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop