記憶の欠片
第三章【未だ月は欠けたまま】

全ては星が教えてくれる

 夏休みが終わり、二学期が始まった。

 美術室に入ると、独特の絵の具と紙の匂いが鼻をくすぐる。

 今日はデッサンの授業らしい。


「二人一組で、お互いを描いてくださーい」


 そう言った先生は、最初からやる気があるのかないのか分からない調子で、すぐに自分の机に戻ってしまった。

 案の定、教室はざわざわし始める。

 真面目に描いている人はほとんどいなくて、笑い声があちこちで弾けていた。

 その光景を見た瞬間、私はふと、夏休み前のことを思い出す。

 文化祭の準備で騒がしかった教室。

 階段の踊り場で、献くんと転びそうになったこと。

 ステンドグラスの光に照らされたあの瞬間。

 海の家での出会い。

 稲くんの涙。

 白兎さんの言葉。

 ——あの夏は、静かだけど確かに私の世界を変えていた。

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