金玉バトル
お金を得ることなんて簡単だよ。
奪えばいいの。
金玉蹴り上げれば、どんな男だって静かになって金品を差し出す。
そんなことかよわい女の子にできるのって?
ザンネーン、私、元男なんでーす。
今日も私はマッチングアプリで知り合った男を待っていた。
ブサイクよりの男だけど、会社は一流企業だという。
事前の電話で、趣味は「お金を数えること。実は家にタンス預金してて…」って聞いた瞬間、ピンと来たんだ。
「いくらくらい?」って笑顔で聞いたら、「2000万」って。
マチアプで会ったばかりの女に、そんな大事なこと教えちゃっていいのかよ。あはは、ありがとさん。
「こんにちは、ナコちゃんですか」
その言葉に私はお仕事モードになる。
パッと顔を明るくして、振り返ると、満面の笑みで「そうです♪」と笑った。
でも、一瞬、あれ?と思った。
マッチングアプリの相手——ケントの見た目。
アプリでは、オールバックだったのに、今は目にかかるくらいの前髪。
セットし忘れたのか?
「今日はワンちゃん、見せてくれるんですよね♡楽しみー」
いやいや、そんなことはどうでもいい。
家にある2000万さえ、手に入れれば。
私はそう思いなおし、ケントの腕に腕をからませた。
ケントの家は池袋から2駅の場所にあった。
ただし、徒歩10分、築30年は経ってるんじゃないかってアパート。
家のドアを開けると、犬がキャンキャンと吠えてきた。
ケントは無視して、奥に入っていく。
「可愛いね、何歳?」
「知らない」
知らない?
「兄貴の犬だから」
はあ。お兄ちゃんと2人暮らしなのか。
それから買ってきた酒を飲もうとすすめたけど、一向にケントは飲もうとしない。私はしびれを切らした。
「そうだ、へそくりってどこにあるの?見てみたーい」
「ベッドの中にあるよ」
「へえ、見てもいい?」
「いいよ」
次の瞬間、ベッドを開けた私は悲鳴を上げた。中からケントとうり二つの男が飛び出してきたからだ。
「仕事してない俺が、どうやって2000万貯められたか分かる?マチアプであった子から奪い取ってたからでーす」
羽交い絞めにされた俺は慌てて叫ぶ。
「俺は男だ!!お前らくらいたたきのめすぞ」
次の瞬間、金玉を蹴り上げられて、俺はうめいた。
「それなら好都合。金玉もよく売れるんだよ。臓器マニアがいるんでね」
