想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜
「はい」
『もしもし蒼羽?』

 すまなそうな、ちょっと暗い声。どうやら予感は当たったみたいだ。

「凱斗さん、フライト情報見ました。ダイバートになったんですよね。大丈夫ですか?」

『俺は大丈夫。こっち方面は今日は全部欠航になった。今夜は広島ステイで、明日帰るよ』

「わかりました。帰りも乗務ですか?」

『そうなりそうだ』

「気をつけて帰って来てくださいね」

 悪天候でのフライトも、ぎりぎりまで到着空港が決まらない緊迫感も、この仕事をしていれば経験し得ることとはいえ、大変だっただろう。

『誕生日なのに、ごめん蒼羽』

 凱斗さんから見えているわけでもないのに、首を振る。

 形式上は夫婦とはいえ、ただの同居人のことをこんなに気にかけてくれるなんて、凱斗さんは本当に優しい人だ。

「そんなこと、気にしないでください。今日はもうゆっくり休んでくださいね」
『……ありがとう。それじゃ』

 通話は切られ、ラウンジのざわめきが戻ってくる。

 せっかく着飾ってきたけれど、ここにいる理由もなくなってしまった。

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