想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

【一階のラウンジで待っています】

 そうメッセージを送ったのは、凱斗さんが予約したお店の名前を聞いていないからだ。

 このホテルには、有名でよくメディアや雑誌にも取り上げられるフレンチと和食のレストランがある。

 凱斗さんの好みで選べばフレンチだと思うけれど、私の好みを優先してくれるなら、お箸で食べられる和食のお店を予約しているかもしれない。

 このホテルはあくまで待ち合わせで、違うお店に行く可能性もある。

 いずれにしろ、楽しみで仕方がない。
 
 誰かを待っている間って、時間が経つのが遅く感じる。

 何度も時間をチェックしてしまう自分に自分で苦笑いしつつ、視線はラウンジの入り口に送る。

 でも、彼が来る気配はない。メッセージをチェックしてみても、既読すらついていない。

 約束の時間まであと二十分ほど。仕事で何かあったのかもしれない。
 
 今日は確か、国内線の乗務だと言っていた。

 急いで会社のアプリを立ち上げて検索をかける。

 彼が今日最後に乗るはずだった便はキャンセルされていて、その一つ前の便は、大雨によるダイバートで、到着地が隣県の空港に変更されていた。

 ああ、これは……。

 浮かれていた気分が、一気に下がる。

 見つめていたスマホが、着信を告げた。凱斗さんだ。

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