想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜
 車中には凱斗さんの好きな音楽が小さく流れていて、凱斗さんの匂いがして、なんだか落ち着く。

「今日はもう遅いから一晩様子を見て、ひどくなるようだったら明日病院に行こう」
「利き手じゃないし、病院くらい一人で行けるから大丈夫ですよ」

 そう言うと、また凱斗さんは顔をしかめる。

「何があるかわらかないから、着いて行く」
「でも、せっかくのオフなのに……」

 体を休めることはもちろん、キャプテンを目指す凱斗さんには、やらなくてはならないことがたくさんある。

 お互いに仕事に集中するための契約結婚なのに、オフの日まで私に時間を割いていたら、結婚した意味がなくなってしまう。

「自分の時間の使い方は自分で決める。だから、いいんだ」

 そう言われると、もう何も言えない。


 家に帰ってからも、凱斗さんは荷物運び、食事の用意、後片付けと、甲斐甲斐しく私の世話を焼いてくれた。

「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「だろ。オムライスにはちょっと自信があるんだ」

 そう言うだけあって、中のバターライスはばらばらとしていて香ばしく、外側の卵はふわっととろけるようで、専門店の味みたいだった。

「お皿運びますね」
「いいよ。俺がやる」

 せめて食器運びくらいはと思って席を立つと、右手で持っていたお皿を奪われた。

「これくらい私がやります」
「蒼羽は座ってな。コーヒー淹れてやる」

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