たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
「ポンっ」

突然、私のスマホが音が出した。

「わっ!」

私の身体はビクッと跳ねた。
襖に肩がぶつかった。

スマホも手から離した。

「ボトっ」

重たい音を立てながら。
畳の上にスマホが落ちる。

私は、明かりの消えたスマホを見下ろしながら、両手で胸を押さえてる。

心臓が、バクバク跳ねる。
息も、ハアハア上がっている。

(な、何?)

「はははっ……」

すると、襖の向かうから、控えめな笑い声が。

私は、パッと顔を上げた。
笑い声のある方を見た。

知っている。

(もしや……)

畳の上のスマホを拾い上げた。
画面を明るくした。

「部屋の前にいる。入れてくれ」

私は、また、にっこりになった。

そーっと、襖を開ける。
格子戸の向こうが見える。

拓真が立っていた。
「シー」と人差し指を立てながら。

私は、うなづいた。

忍び足で、歩いていく。

「ガラガラ」

格子戸を開けた。
拓真が、サッと部屋に入る。

入れ替わるように、私が外に出た。
格子戸に手を突いて、頭を右左に振っている。

通路には誰もいない。

パッと、振り向く。
もう拓真は見えない。

革靴もない。
襖も閉まってる。

(よしっ!)

私も、部屋の中に入った。

「ガラガラ」

格子戸を閉めた。

「ガチャっ」

鍵を閉めた。

奥に戻る。
襖を開く。

まだ、拓真は見えない。

襖をぴったり閉める。
ようやく、部屋の中をしっかり見渡す。

拓真を見つけた。
広縁にいた。

机の上にナイロン袋を置いて、中身を一つ一つ、取り出していた。

ビールやら、おつまみやら。

私は、声をかけた。

「買ってきてくれたの?」

拓真は、こっちを見た。

「ああ。お前も晩飯、まだだろ?」
「うん。まだ」

拓真は、また視線を落とす。
手を動かしながら、こう話す。

「向こうに帰ると、またいつゆっくり話せるか分からないからな。今のうちに、話せるだけ話しときたい」

ーーーまた

それが何日先、何ヶ月先になるかなんて、私には分からない。

でも私にとって、今日の「また」は、希望でしかなかった。
だって、もう終わりに怯えないで良い日が、約束されてるってことだから。

だから、私の声は、めいっぱい弾んだ。
私の顔は、めいっぱい笑っていた。

「うん。話そっ!」

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