たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
私はその日、買い出しから帰ってくると、口をあんぐりと開けながら、両手に抱えた袋をドスンと床に落とした。

日の長い夏はこの時間でもまだ明るく、葉の緑もはっきりと見える。その緑をバックに、テラスには見違える光景が広がっていた。

まず、ど真ん中に置かれたバーベキューグリルでは、英佑さんが食材を焼いてくれている。

英佑さんの私服は、初めて見た。
正直、シャツに、スラックスは……
うん。毎日見ているやつだ。
あっ、でも袖の長さはあれより短い。

「宇佐見さん。そんな肉ばかり食べると、またコレステロール値、高くなりますよ」

確かに、英佑さんの言う通り、グリルの上にあるのは、ほとんど肉ばかりだ。
なぜなら、アシスタントの宇佐見さんが、さっきからずっと肉しか渡さないから。

「何、言ってんの。バーベキューなんて、無茶してなんぼでしょ」

いつもパーティ衣装の宇佐見さんも、今日は蝶のようなカーディガンに、パンツスタイル。
何を着たってやっぱり、キラキラした人はキラキラのままだ。

「一体どんな理論ですか。それは」
そうぼやきながら、英佑さんはまた肉を焼く。

そして、テラスの端っこでは、そっくりな二つの背中が、流しそうめんの竹をせっせと組み立てていた。

甚平に、短い髪。

一瞬でピンと来た。
だって、毎日見ているんだから。

絶対に父さんとはじめ先生だ。

(いや、どこからどうやって話が……)

二人に駆け寄ろうとした、そのとき。
元気いっぱいの挨拶が、玄関から聞こえてきた。

「お邪魔しまーす」

根元マネージャーだ。
私はもちろん血相を変えて、玄関に駆けつけた。

「ちょっと!根元さん!これは一体?」
「あれ?電話でお伝えしたじゃないですか」

根元さんは、歩きながら、そう答える。
だから私も、その後ろをぴったりとついていく。

「えっ?」

すると、いきなり目の前の背中が止まった。

そして、根元マネージャーは、ものすごい厳しい顔つきで、こちらを向いた。

「小濱さん?イベントは……?」

この心がヒューと小さくなる感覚。
まるで、授業で当てられた生徒の気分だ。

「たくさん、いてこそ?」

私は、恐る恐るそう答える。
うん。多分、正解だったんだろう。

「ですです!」

根元マネージャーは、たちまち笑顔になって、そのままテラスの輪に入っていった。

私は、そんな心底楽しそうな背中を、ただボーっと遠くから見つめている。

(あー、良かった…………って!いや、全然良かったじゃない!)

そして、またリビングに戻った。

でも、そこにあったはずの荷物が、綺麗さっぱり消えている。

(あれっ……?)

どこだ?どこだ?と目を配らせていると、賑やかさの影に隠れたキッチンで、拓真を見つけた。

しかも拓真は一人静かに、買ってきた食材たちを、冷蔵庫へと移し替えてくれていた。

私は、まるで密談みたいにヒソヒソとした声で、話しかけにいく。

「……ごめん、柳生さん」
「ん?何が?」

拓真は手を止めない。
私には横顔しか見えない。
だから、その短い返事にも、またヒューと心が小さくなる。

それは、しっかり罪の意識があるからで……
私は正直に自分の罪を自白した。

「いや、そのー、ちゃんと詳細聞いとくべきだったな、と……」

でも拓真は、意外とノリノリだった。

「良いんじゃないか?ほら、ぼうも楽しんでるみたいだし」
「えっ?」

拓真が指差す方向に目を移す。

すると、本当に湊は、宇佐見さんから嬉しそうに肉の山をもらっていた。

「今日の目的はそこだろ?」

そう言いながら、拓真はまた、せっせと冷蔵庫に食材を移し始める。

今日も明け方に帰ってきて、そのあと家で寝たのは二、三時間くらい。で、多分また、ついさっき、帰ってきたって感じだ。

でも、なんだか、いつもより顔色が良く見える?気がする。

冷蔵庫の明かりのせい?

とにもかくにも、私の胸のつかえは、拓真のおかげでスッと流れた。

「……まっ、それもそうだね」

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