たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
「かんぱーい!」

ビールやジュースの入ったプラカップが、グリルの上に集まってくる。

そのあと、八人の大所帯は、自然の流れで、流しそうめん組と、グリル組に分かれることになった。

グリル組でよく食べ、よく喋るのは、やっぱり宇佐見さんだ。

「それにしても、あの拓真がねえ……やっぱり、二人に来てもらって、大正解だったんじゃなーい?」
「ああ。凄く助かってるよ」

そうして、また拓真のプラカップから、ビールのかさが減っていく。

(へえ……助かってるんだ……)

いつもより、若干ペースが早いから?
それとも、宇佐見さんのおかげ?

どちらにせよ、自分では絶対に引き出せない拓真の言葉が、たくさん聞ける。

だから、私は焼けたお肉を取り分けながら、一つ一つ、その言葉を取りこぼさないように、胸の中へとしまっている。

「うわっ。今日は、なんだか雪でも降りそうだわ」

すると、宇佐見さんは、拓真をおちょくるみたいに、突然ブルブルと凍えだす。

それには、プラカップを持った堅気な男たちも、切れ味鋭く切り込んだ。

「雪?事実なんだから。そう言うしかないだろ」

「柳生の言う通りです。実際、測った数値も、だいぶ良くなっていましたし」

でも、二人の力をもってしても、宇佐見さんには敵いやしない。

「ちょっと!ご飯中に、数値の話はやめてくれないかしら?」

今だって、そんな指摘そっちのけで、塊肉を噛みちぎる。
うん。グリル組はずっとこんな感じだ。

そうこうしていると、流しそうめん装置を完成させた父さんが、火の周りに戻ってきた。

「なんだ?うちの子たちが役に立ってるって、話か?」
「ええ、それはもう……」

なぜか拓真は敬語を抜かない。
昔っからこうだった。

「っく……そうか、そうか」

すると、父さんは今日もまた、突然目頭を押さえ始めた。

「俺がこうして今あるのも、鈴子のおかげだからな」
(はぁ……父さんってば……)

恐らく、久しぶりの再会と、お酒の力で、涙腺がガバガバになっているんだろう。

私は、やれやれと言った感じに、ため息をつきながら、トングを置く。

そのとき……

私より先に、ずっと箸を持っていたはずの宇佐見さんの手が、父さんの背中をべしべし叩いた。

そして、口にものを入れたまま、モゴモゴと、こう(げき)を飛ばす。

「ほら。どうせ、あんたはまた、鈴子が見捨てずにいてくれた、とか言うんでしょ?もう。私たちも、何百回聞いてきたことか」

(父さん。また、そんなことを)

「そうだよ。見捨てずって、父さん。家族なんだから、当たり前でしょ?」

そうやって、いつものように、父さんの言葉を訂正する。

すると、父さんは日に焼けた腕で、赤い目をごしごしと擦りながら、こう言ってきた。

「鈴子。それに拓真も。ほんとでかくなったもんだな」

まだ外には汗が噴き出すような厳しい暑さが残っている。
でも、それとは違う。
なんだか身体の中から、熱いものがグッとこみ上げてくるような、そんな気分だ。

(よしっ……もう大丈夫そうだねっ!)

私は、気を取り直して、新しい紙皿に、父さんの分を盛り付け始めた。

「あら?でも、この子、相当な売れっ子なのに。テレビでは良く見るんじゃないの」
「いや。鈴子はな、昔っからテレビで拓真を見たがらないんだよ」

(と、とおーーさーーーん!!!)

どうにか手は動かし続けている。
でも頭の中は、もう、やばい、やばいと、慌てふためいている。

すると、隣からは、なぜか笑い声が聞こえてきた。恐る恐る、首を回す。

そこには笑っているけど、絶対に笑っていない。
むしろ、グサッと、グサッと刺されるような。
そんな見てられない笑顔があった。

「あはは……それは、さすがに寂しいですね」
(あーーっ……)

私の顔は、多分このとき、思いっきり引き攣っていたと思う。

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