たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
エレベーターのドアが開く。
鏡には、いるはずのない人が映った。

(えっ……?)

私は大慌てで、身体をぐるっと回す。

すると、足首までおかしな方向に曲がり、ズキっと、痛みを感じる。

「……いっ……たぁ……」

私は、か細い声を出しながら、足首を押さえるために、しゃがみこんだ。

「……大丈夫か?」

こんな子供じみた行動も、見下げる拓真の瞳には、すべて映し出されている。

(は、はずっ……)

私の身体は、勝手に笑い、勝手に立ち上がる。

「……あはははっ……当たり前じゃん。これくらい、なんてことないよー!!かすり傷、かすり傷!!」

そうだ。

どんなに言葉が出ないほど、恥ずかしい思いをしたって、笑い飛ばせばなんとかなる。

自分の受け取り方次第で、結末は変わる。

そんなの、自分が一番知ってるじゃないか。

その痛みのおかげで、私はようやく、正気を取り戻したらしい。

しかし、今日のその人は、なんだかおかしい。

いくら笑ってみせても、なぜか、足首しか見てくれない。

「……歩けるか?」
「うん、全然全然!余裕余裕!」

「……早く冷やさないとな」
「あはっ……いや、ほんと、大袈裟なんだ…って……」

(……ん?あれ?)

内廊下を歩き始めても、時折、隣から妙な視線を感じる。

「……腫れは?」
「……は、腫れ?」

私は、振り向かない。
足首だけを見る。

「いや?平気みたいだけど?」
「……そう」

多分、拓真はもう、こっちを見てない。

スニーカーのキュッ、キュッ。
革靴のコツ、コツ。

しばらくは、そんな二人のかかとの音だけが、空間のすべてを満たす。

すると、また、隣から視線を感じる。

「痛みは?」

ああ……

今度こそ、拓真と目を合わせなきゃならない。

「……うん。大丈夫」

「そうか。悪かったな。驚かせて」

また、その人の横顔しか見えなくなる。

「いや……全然?」

私は、ジーッと見つめる。

相変わらず、何を考えているのか、わからない。

(やっぱり、何かが、おかしい……)

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