たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
ようやく、中庭に出た。
暖色のポカポカとした小さな明かりが、あちこちにある。
だから、不思議と一人でも心細くない。

でも、やっぱり、浴衣一枚だから?
ちょっとだけ寒い。

柵に腕を置いて、空を見上げる。
真っ暗だ。丸々とした月が一つだけ。

だから、私の視線、すぐに落っこちる。
はぁ……と、いかにも、気重なため息をつきながら。

すると、柵の向こう側には、端から端まで並々と水が張ってあった。

赤や黒の鯉が、伸び伸びと泳いでいた。
頭上にある丸々とした月や、垂れ木まで、見える景色すべてを、ゆらゆらと映し出していた。
もちろん、私も映る。

私は、そんな気ままに泳ぐ鯉たちまで、つい不安げな目で、追いかけていた。

この鯉のように、池の中に放り込まれたら、どうなるだろう。って。
きっと、どこに行けばいいか分からず、一人ぽっかり浮いたままなんだろう。って。

最近、毎日、こんな感じだ。

暗がりに隠れた湊の寝顔を見ながら。
広縁で星月の明かりを探しながら。
こんな目になっている。

それは、一人だから。
いつか来る一人の未来を知ってしまったから。

これまでずっと、未来なんて、今以上なんて、見ようとしたこともなかった。

ただ、一日を終えるって、本当に奇跡みたいなことだから。どうしても、それ以上見たら、その分、今ある何かを手放さなければならないのではと、そう思えてならなかった。

母さんが亡くなって。湊が生まれて。
父さんが不安定になって。

でも、私はここに来てから、全てを理解してしまった。この私を満たす役割は、なくしたくないと思っても、勝手に離れていってしまうものなのだと。

ここにいると、考える時間だけは、たくさんある。だから、そんな見たくない未来も、見なくちゃいけない。

何度見ても、見えるものは一緒。
私には、何もない。空っぽだ。

だから、今日もそんな未来が、不安で不安でたまらない。って、自分の腕に顔を埋める。
また、俯く影で、ため息をつく。

いつも、そうだ。
拓真を送り出したときも。湊が生まれたときも。

全部、ただ、喜ばしいだけの出来事でないといけないのに。勝手に、こうなってしまう。

(私だって分かってるよ、全てに終わりがあることくらい。ほんと、拓真はなんでいつもいつも……)

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