結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 そのとき、扉を叩く音が聞こえ、返事をすればエマがワゴンを押して部屋に入ってきた。
「朝食をお持ちしました」
 エマの明るい声で私の気分も落ち着いてきたが、すぐに彼女は顔を曇らせた。
「顔色が悪いようですが、具合が悪いのでしょうか?」
「ちょっと考え事をしていただけよ。きっと昨日の疲れもあったし、お腹が空きすぎているからかしら?」
 私が笑って答えると、エマも安心したのか笑顔を見せる。
「そういえば、旦那様は食堂で朝食をとられてました。奥様のことを聞かれましたので『昨夜のことでお疲れのようなので、お部屋で朝食をとられるとのことです』と答えておきましたが、問題はなかったでしょうか?」
「ええ、そうね。昨夜の件で疲れてしまったのは本当だし……嘘ではないわね……」
 だが私たちは新婚だ。まして昨日は初夜と呼べるような一夜だったわけで、それで「お疲れ」となれば、何を想像するか。不仲説が広まるよりはいいだろう。シオドアがああやって離れとこちらを行き来しているくらいなのだから。
「では、あとで旦那様に会いにいくわ」
「はい。それがよろしいかと」
 エマが淹れてくれたお茶を一口飲むと、香ばしさと少しの渋みが口の中いっぱいに広がった。
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