頻発性哀愁症候群
「寂しくて寂しくて堪らないから、人気者になれるように努力した。それで、少しは症状は改善したんだけど、まだ全然ダメなんだ」

そう言って菅谷くんは携帯を取り出し、私に携帯の画面を見せる。

菅谷くんが私に見せたのは、発信履歴の画面だった。
 
「菅谷 浩樹(ひろき)」と書かれた人物への発信履歴が沢山並んでいる。

「浩樹は俺の兄。時間に融通の効く仕事をしてるから、俺は兄貴に依存してる。寂しい時に『大丈夫』と言ってくれるのは、いつも兄貴」

菅谷くんはあまりに苦しそうな顔をしていた。

「兄貴に迷惑をかけたくないのに、この病気のせいで俺は兄貴の邪魔にしかなってない。本当に最低なんだ。クラスメイトのことも寂しさを埋めてくれる道具にしてしまってる。そんな自分が最低で最悪で大嫌い」

菅谷くんの顔には罪悪感が滲み出ていた。いつもの明るい菅谷くんの表情からは想像も出来なかった。


「どうしてこんな最悪な病気が存在してるんだろうな」


その菅谷くんの言葉は、まるで私の心の叫びのようだった。


「だからさ、川崎さん。俺と症状を埋め合わない?お互いに寂しい時は一緒にいるようにするんだ」


意味の分からない提案の後、菅谷くんが急に私の手を握る。

「この病気の情報を集めて、この方法を見つけたんだ。全員に効くとは限らないし、失敗に終わるかもしれない。それでも、試す価値はあると思う」

菅谷くんが私の手を両手で包み込むように握り変える。


「寂しくないよ、川崎さん。全然寂しくない」


菅谷くんは目を瞑り、何度もそう繰り返し私に話しかけてくれる。

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