青い青い空
私は、いやと言うほどよく知っている。
一週間も放っておけば、この家が汚部屋になることを。彼がご飯もろくに炊けないことを。麦茶と間違えてめんつゆを飲んだことがあるのを。
そんな、生活力皆無と名高いあの了安彗星が淹れたお茶を目の前に、私はゆっくりと口を開いた。
「実は最近、よく眠れていなくて」
「それは、仕事が増えたことが原因?」
「それもあるかもしれません。よく、変な夢を見るようになって」
「変な夢って?」
一度躊躇った後、素直に打ち明けることにした。
「私が、全ての世界から消えてなくなる夢と、言えばいいんでしょうか」
ある時は、車に轢かれた夢を。ある時は、階段を下まで転がり落ちた夢を。またある時は、通り魔に襲われて。強姦にも襲われて。自ら命を投げ出して。
そうして、何度も消えていった。事切れる瞬間を、どこか他人事のように思いながら。涙を流す誰かに、見守られながら。
「それ、いつ頃からなの」
「これといった心当たりはないんですが」
あるとすれば、初めてあの【青い青い空】を読んだ時からかもしれない。