青い青い空
先日、つばの深い帽子の上からパーカーのフードを被った若い男性から、封筒を預かったという。町民ではないと一目見てわかったから、よく覚えていると。
「古い小さな町だけど、どこかに一つくらいは監視カメラがあるだろう。でも僕たちはただの出版関係者だ。警察じゃないし、閲覧する権限はない」
作者不明の【青い青い空】が、もし万が一この先何かの賞を取ったとしても、公表されることなくお蔵入りとなってしまうのだろう。
視線を落とした私に、「一つ、こんな話をしてみようか」と、どこか勿体振った口調で了安は語り始めた。
「十五年前。訃報を聞いた僕は、その時初めて彼に会った。もう話すことも、目を合わすこともできなかった、古葉龍青という人物に」
彼を見送ったのは、出版関係者五名。出版社代表取締役。当時文芸部署に所属していた佐裕子、柳一、そして彼を担当していた龍ノ平一石。
「そして僕。一人の小説家として、そして一人のファンとしてね」
「きっと、幸せだったと思います。皆さんに見守っていただいて」
「そうだと僕も嬉しいよ。でも、今話をしたいのはそういうことじゃない」