青い青い空

page.25 鋭い視線、八つ当たり




 ギブアップの意思表示に、彼の背中を叩く。聞きたいことは山ほどあるが、それよりもまず息ができなかった。


「ああ、すみません。つい嬉しくて」

(満面の笑顔が怖い……)

「遅くまでお疲れ様です、伊代さん」

「! お、お疲れ様、です」


 名前呼びに思わず乙女心が敏感に反応すると、かあっと耳まで熱くなるのは一瞬だった。

 そんなこちらの心情を余所に、右京はまるで今気が付いたとでも言うような顔で「あ、乗りますか?」なんて、白々しくエレベーター前で呆然としているであろう一石に尋ねていた。

 動揺がひしひしと伝わってくるが、右京のおかげで彼の顔が見えないことだけは救いだった。



 けれど、流石にこれ以上は私の良心が許せそうにない。


「……落ち着いたので大丈夫です」


 右京にだけ聞こえるように囁くと、「今はまだちょっとお勧めしないんですけど」と言われ首を傾げる。

 けれど彼はすぐに「ご無理なく」と、想像よりもやさしい返事をくれた。


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