青い青い空

 失礼な会話が耳に届いていないことを祈りながら、先に席へと着いていた彼の前にお冷やをそっと置く。


「本日のホットサンド。あと一緒にブレンドを」

「――――」


 うんともすんとも返ってこない返事に、怪訝に思った視線が上がってくる。


「ああ、青崎さんでしたか。失礼しました」


 こぼれ落ちそうになる言葉をぐっと堪えて、すみませんと小さく断りを入れた。


「ホットサンド、夜はやってないんです」

「え? そうなんですか?」


 眼鏡の向こう側が虚を衝かれたように丸くなる。疑っていたわけではないが、昼に彼が利用していたことは間違いないらしい。

 以前から昼食を食べ損ねた会社の人たちがよく来ていたし、彼もきっとその一人なのだろう。


「……そう、でしたか」


 残念そうな声と共に、お腹が切なそうにないていた。


「頼んできますよ。お腹が切実にお求めのようですし」

「いえ。お店にご迷惑をおかけするわけにはいきませんので」

「右京さんがそれでいいなら……」

「青崎さんのお勧めは何ですか」

「え? ……ハヤシライスと、ナポリタン? あと、ハンバーグも美味しいです」

「子供舌ですね」


< 207 / 650 >

この作品をシェア

pagetop