青い青い空

 感謝の言葉を伝えようとしたところで、彼はぴたりと足を止めた。どうやら目的の場所に着いたようだが、一応念のため尋ねてみる。


「こ、ここですか?」

「社食に間に合わなかった時よく利用するので。味は保証します」

「い、いえ。そういうことではな」

「あ、二人です。禁煙席でお願いします」


 そこは、大通りを挟んだオフィスの向かい。高層マンションの下にあるこの場所は、常連の彼よりも、余程私の方が勝手知ったる喫茶店だったから。


 * * *


「伊代ちゃん、単刀直入に聞くわね」

「な、何でしょうか。かおんさん」


 そして喫茶店の店長――紅林(くればやし) かおんは、案内もそこそこに客を壁際へと追い遣り、そしてこう言い放った。


「結婚式はいつ」

「かおんさん気が早すぎ……」

「ということはやっぱり彼氏なん」

「ち、違います。ただの同じ会社の人」


 学生時代から数えると、彼女とはかれこれもう十年以上の付き合いになる。昔から互いのことをよく知っているからか、二人の間に遠慮という文字は一切ない。


「被せ具合が怪しい~」

「はっきり否定しておく方がいいと思ったので」

「えー勿体ない。なかなか良物件そうなのにい」

「お冷や持っていきますね」


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