青い青い空



 エレベーターに乗り込むや否や、弟は口を開いた。


「誰。さっきの眼鏡」

「か、会社の人だよ。部署は野田さんのところだから違うんだけど、何度か助けてもらったことがあって。今日は御礼に食事を奢らせてもらうことにしたの」


「あっそ」と興味なさげな声が狭い箱の中に響く。でも、掴んだ腕は放してくれなかった。


「……あの、宵くん」

「さっきの何」

「え?」

「欠陥とか冷たい人間とか言ってたろ、眼鏡が」


 眼鏡を連呼する弟に、右京さんねと彼の名前を教えてから、どう言おうかと少しだけ考える。


 なかなか考えをまとめられないでいると、あっという間にエレベーターが目的地に着いた。その間じっと、弟は答えを待ってくれていた。


「……背中をね? 押してもらってたの」

「お前が欠陥人間だから?」

「ううん。そうじゃないよって、教えてくれたの」


 だから、あなたと話がしたいと思った。思えるようになった。こんな風にまた、会話ができることが嬉しかった。


「もう一度頑張りたいなって思ったの。家族として」

「無理だろ」

「や、やってみないとわかんないよ?」

「無理だよ、お前には」

「……どう、して……?」

「そんなのお前が一番よくわかってんだろ」


< 215 / 650 >

この作品をシェア

pagetop