青い青い空
『こちら久賀野。正面玄関異常ありません』
『新堂です。裏口も、猫が数匹いる程度で問題ありません』
会場を見渡してから、私も異常がないことを伝える。
犯人の狙いは先生たち。比較的安全なグッズ書籍売り場に配置させてもらってはいたが、実際犯人がどこにいるかはわからない。
怪しい人物を見つけたら、すぐに報告できるようイヤホンをぐっと耳に押し込んだ。
耳元からはすぐ『了解。もし何か気になることがあればすぐに連絡するように』と、何かを察したらしい一石の声が聞こえてくる。
平静を装ったつもりだったが、やっぱり態度に出やすいらしい。というか出すなと言う方が今は難しかった。
(本音を言えば、由良野さんのことは苦手だ。でも……)
一生懸命ここまで大きくした作品が、そんな風に言われるのは嫌だし、ここ最近ずっと残業をして準備をしていたのをよく知っている。そして目の前には、嬉々として今か今かと発売時刻を待っているファンの姿。
先生たちのため、ファンの人たちのため、何としてでも作品を守り抜かないと――。
「相変わらずとろすぎ。このままだと日が暮れるんだけど」
「す、すみません……」
そんな志も、雨量が増すごとに薄れていったが。