青い青い空
page.32 最悪な出会い、災厄な父
出会いは最悪。第一印象も、きっと短い人生の中で一番悪かった。
『いい顔してんなー! あーんで? お前の名前なんだっけ』
『あ、……あおさき、いよ。です……』
人の嫌がることを存分にしたその人――野田柳一という文芸部署の大先輩は、それはそれは、清々しい顔で大笑いしていた。
(どうしてこの人、オフィスビル中を肩車して走ってたのに、息一つ切らしてないの……)
終始『下ろしてくれ』と叫んでいた私の方が、何故か膝に手を置いて肩で息をしているというおかしな現象に。酸欠も相まってか、上手く頭が働かない。
『青色に橙色か。二色持ちとか、どんだけ欲張りなんだお前』
(……ちょっと。なに言ってんのかわかんない)
『いい名前だな。あおさきいよ』
(……もしかしなくとも、伊予柑の伊予だと勘違いしてる?)
『俺も好きだぞ橙色』
(でも、この嬉しそうな笑顔の手前、訂正するのはちょっと気が引ける……)
どうしたもんかと悩んでいると、ぐしゃぐしゃっと頭をこれでもかというほど撫で回された。まるで、犬か何かにでもなったような気分だ。
そんな状態の私が大層気に入ったのか。その後も、大笑いしながら何度も頭を撫でられた。