青い青い空
気まずい沈黙に堪えるよりも、いっそのことたとえ腹を立てられても根掘り葉掘り聞かれた方がまだ気が楽だったかも知れないと、弱気になっていた頃。どこかで耳にしたことのあるメロディーが聞こえてくる。
(……これ、鼻歌?)
無意識だろうか。無音の部屋に響くそれは、一昔前のアニメソングだ。しかも同世代の私にはドンピシャリ。
ワンフレーズが終わり、再び沈黙が流れると、今度はCMでよく聞くカップラーメンの曲が。次は一昔前のアイドルソング。今度は今しているドラマのテーマ曲。
「……何? ニヤニヤして」
「す、すみません」
すっかりその鼻歌のせいで、気が緩んでしまった。
「その、鼻歌が……」
「作業に集中できるから」
(あ。無意識じゃなかったんだ)
「昔はいつもやってたんだよね。それでうるさいって、集中できないって言われたからやめたけど」
「え。部署の中で?」
「そ。部署の中で」
思わず、デスクに座りながら鼻歌を歌う彼を想像する。想像して、怒られるところまでを思い描いてみた。
「確かに、集中できないかも」
「集中力途切れるのを人のせいにすんなって話だよ」
「違うんですよ。由良野さんの選曲が悪いんです。カップラーメン出されたら、もうカップラーメンしか考えられないじゃないですか。お腹空くじゃないですか」
「知るかよ。自己責任だろ」
一緒の部署で働く仲間としては、それは非常に頷きがたい問題である。