青い青い空
 ♢


 出て行ったまま、未だ開いている扉に、息を整えてから触れる。


「早く帰らないと、快慶くんが心配するんじゃないですか?」


 窓辺に立つその人は、酷く驚いた様子でこちらを振り返った。


「しねえよ。子供じゃあるまいし」


 けれど、ふっと笑みをこぼした次の瞬間にはもう、普段通りに戻っていた。口調の悪さからして、普段と言うよりは完全に素をさらけ出していたが。


「どうせ今頃、俺が帰ってこないのをいいことにゲームしてるんだろうから」

「一石さん、もしかして寂しいんですか?」


「なんでそうなる……」と頭を抱えた彼に、少しばかり申し訳なさが募る。そのゲームを一緒にしている相手は、恐らく自分のことだろうから。


 不意に会話が途切れる。雨の音が聞こえた。

 いつの間にか窓に寄りかかっていた彼に、ふと再会した日のことが頭をよぎる。


「いいのか。行かなくて」


 窺うようにこちらをじっと見つめるその人が、少し幼く見えて。どうしてかその言葉の意味が、全く別のものに聞こえて。思わずふっと笑みがこぼれる。


「寂しがり屋の一石さんを置いては行けませんからね」

「まだ言うか」

「弱っている時を狙った方が、いろいろ吐いてくれそうじゃないですか」

「お前ねえ……」

「もう、逃げる必要もないのでしょう?」

「青崎……」


 くしゃりと僅かに頭を抱えた彼の表情は、酷く安堵したように微笑んでいた。



「なら、今から少しだけ。時間をくれるか」


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