青い青い空

page.40 十五年前、幻の授賞式




 あれから一言も話さないまま、エレベーターはビルの最上階で止まる。

 ここへ来るのは入社した時以来。開いた扉に、少し緊張した面持ちで編集長の後に続いた。


「ノックもなしに誰かと思えば。あんたの顔はさっき嫌と言うほど見たんだけど」

「それ、そっくりそのままお返ししますよ、専務」


 龍ノ平 佐裕子(りゅうのひら さゆこ) 専務。

 多忙で不在がちの代表に代わり、社全体を取り纏めている手腕家。常に強気な目元とベリーショートの髪がよく似合っていて、一見するとクールな女性に見えるのだが。


「もしかして、あんたが背中に隠してるのは……」

「別に隠していませんよ」


 目が合ったその時、彼女の目の色が変わった。


「伊代ちゃん!? 久し振りー! 元気してた? 入社してきた時以来だから……五年振り? 相変わらず気持ちのいい抱き心地! あ、でもちょっと痩せたんじゃない? しっかり食べないと倒れちゃうわよ? そういえば髪切ったのね! 長いのも好きだったけどこっちもよく似合って……」


 そう。龍ノ平 佐裕子専務は、実はとってもお茶目な人である。


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