青い青い空
担任を睨み付けた母親は、今一度自分の息子をよく見えるようにその肩を抱く。初めは嫌そうな顔をした息子も、私の隣に視線を移すと、その口元を嘲笑に歪めた。
「青崎さん。あなた、息子のこの哀れな姿を見て、何も思いませんの」
「勿論治療費はこちらで全額支払わせていただくつもりです。治療につきましても、こちらで手配を」
「治療費?! 手配?! ハッ。お医者様だから、端金で丸く収められるとでも?!」
不快な甲高い声が、一段と張り上げられる。
「これだけ手酷くやられたんですもの。こちらだって黙ってはいられませんわ」
――相当額の慰謝料。そして、彼の退学処分を要求致します。
呆気にとられる大人たちを余所に、一人驚愕の反応を寄越した弟へ、「これはね、青崎くんのためでもあるのよ」と女性はさらに続けた。
「よく考えてもご覧なさいな。これだけ大暴れして、学校中にはあなたの噂が広がりに広がっている。一ヶ月の停学処分のあと、帰ってきてあなたの居場所がこの学校にあるかしら?」
「なかったとしても、もうすぐ卒業だし」
「その卒業までの残り数ヶ月、毎日心狭い思いをわざわざする必要はないと思うのよね」
「そんなもん、なんでわざわざあんたに忠告されなきゃいけねえんだよ」
「はあ。青崎くんの話は息子からよく聞いていたけれど、まさか学年一位がこんなに口の悪い子だったとは」
「だから、それがあんたに何の関係があるってんだよ」
「あるに決まっているでしょう。まさか生徒会長が、こんな粗暴な生徒さんだったなんて。この学校の品位が問われるわ」