青い青い空

「べとべとって言ったのに」

「言ったな」

「唾液まみれなのに」

「手洗えばいいだけだろ」


 繋がれたままの小指。どこか楽しそうな表情。

 なんだか頬を膨らしていること自体が馬鹿らしく思えてきて、ふっと笑った。


「宵くんごめんね。お昼ちょっとおかしかったよね」

「おかしいっつうか、俺がそうさせたんだろ?」

「宵くんのせいじゃないよ。私が一人で勝手にむっとしちゃっただけ」

「でもそれって結局……」


 そんなやりとりが永遠に続きそうだったので、反対側の手に持っていたちいさな紙袋を、ずいっと彼の目の前に突き出した。


「何これ」

「私からのお詫びです」

「いや、普通に考えて受け取れねえ」

「宵くんが受け取ってくれないと、永遠にこのやりとり終わらないよ」


 苦い顔で「脅しかよ」呟かれる。

 けれど、額を拭ってからすぐ「これ何?」と、素直に受け取ってくれた。


「薬用のリップクリーム」

「すっげ。俺が今一番欲してるやつだし」


「流石、おねえさまよくわかってんじゃん」と、煽てて木でも登らされるのか。機嫌が良さそうな彼に、結局ラーメン食べ切れたの? と聞いてみる。


「ふっ。俺が負けるかよ」

「相手はラーメンだよ」

「たかがラーメン。されどラーメン」

「何回諦めようと思ったの?」

「つかマジで救世主だし。これで少しは飯も旨く食える」

(数え切れないほど諦めようとは思ったのね)


< 444 / 650 >

この作品をシェア

pagetop