青い青い空
「べとべとって言ったのに」
「言ったな」
「唾液まみれなのに」
「手洗えばいいだけだろ」
繋がれたままの小指。どこか楽しそうな表情。
なんだか頬を膨らしていること自体が馬鹿らしく思えてきて、ふっと笑った。
「宵くんごめんね。お昼ちょっとおかしかったよね」
「おかしいっつうか、俺がそうさせたんだろ?」
「宵くんのせいじゃないよ。私が一人で勝手にむっとしちゃっただけ」
「でもそれって結局……」
そんなやりとりが永遠に続きそうだったので、反対側の手に持っていたちいさな紙袋を、ずいっと彼の目の前に突き出した。
「何これ」
「私からのお詫びです」
「いや、普通に考えて受け取れねえ」
「宵くんが受け取ってくれないと、永遠にこのやりとり終わらないよ」
苦い顔で「脅しかよ」呟かれる。
けれど、額を拭ってからすぐ「これ何?」と、素直に受け取ってくれた。
「薬用のリップクリーム」
「すっげ。俺が今一番欲してるやつだし」
「流石、おねえさまよくわかってんじゃん」と、煽てて木でも登らされるのか。機嫌が良さそうな彼に、結局ラーメン食べ切れたの? と聞いてみる。
「ふっ。俺が負けるかよ」
「相手はラーメンだよ」
「たかがラーメン。されどラーメン」
「何回諦めようと思ったの?」
「つかマジで救世主だし。これで少しは飯も旨く食える」
(数え切れないほど諦めようとは思ったのね)