青い青い空



 慣れないくすぐったさに、思わず手元から顔を上げる。窓の外の日差しは少しずつ柔らかくなり、やさしい風が微かに秋の空気を連れてくる。暑かった夏が、もうすぐ終わるようだ。


 いつものように食堂でランチを済ませた私は、後れ毛を指にくるりと巻き付けてから、ぱたりと【青い空】を閉じた。そして、空色のハードカバーにそっと触れる。


(よく、似てる気がする)


 生まれた瞬間から今まで、色のない世界で過ごしてきた。けれどたった一度だけ、その例外があった。それは、了安と【青い青い空】の作者を捜しに行った時だ。

 屋敷に描かれていた、青い空や白い雲、そして草木の緑。まるで風景の一部を切り取った、壮大な画。けれど私は、何故かその画にだけ、はっきりと色を認識することができていた。


(あの時は動揺してそれどころじゃなかったけど、あの画の空と表紙の空が、似てると思うのは何でなんだろう)


 世界は空で繋がっている――それは、様々に表情は変えても、空というものは一つしか存在しないと言うこと。似ているなんて当たり前だ。同じなのだから。


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