青い青い空
「ありがとう。愛してるぜ伊代っぺ」と、ふんだんに投げキッスを送って今日も賑やかに立ち去っていった黒瀬の背中が、食堂から完全に消えるのを見送ってから、ゆっくりと振り返る。
「それで? 当の本人はこのまま隠れてるつもり?」
「はて。何のことでしょう」
真後ろにいたのは、いつかのように右京だけ。けれどテーブルの上に置かれたままの味噌ラーメンCセットを、私が見逃すわけがなかった。
「どうやらバレてるみたいですよ」
「お前、背中に目でも付いてんのかよ」
黒瀬が来た途端、背後でガタガタと音を鳴らす方が悪いでしょうに。
「どうして素直に心配だって言わないの」
「言ったところであいつが直すタマかよ」
「あれは直さないでしょうね。そういう生き方しかご存じないみたいなので」
「ほらな」
「右京さんは一体どっちの味方なんですか」
「僕は事実を述べているだけですよ」
「確かにそうですけど」
「事実ついでに付け加えると、彼の方にも込み入ったご事情がお有りみたいですよ」
それについて特に何も言わなかったが、テーブルの下から出てきた久賀野は、今にも「何でお前が知ってんだ」と言いたげな顔をしていた。