青い青い空
「君が元気ならそれでいい」
その言い方に違和感を覚えて運転席を見遣る。彼は、少しだけ申し訳なさそうな顔でこちらをちらりと見た後、眉尻を下げてみせた。
「さっき、君が途中で席を立った時、少し様子がおかしいように見えたから」
よく見ている。見られていたのだなと、少しだけ反省する。流石は、十段階評価の一だなと。
「先生は、何か心配していることってありますか」
「んー。伊代クンがそそっかしいこと?」
「自分のことでです」
「特にないかな」
「じゃあ、不安に感じていることは?」
「目を離した隙に伊代クンがどこかへ行ってしまうこと」
「自分のことで」
「特にないよ」
「……それじゃあ、怖いと思うことは?」
「伊代クンが僕の前から消えてしまうこと」
「先生」
「本当だよ」
「……先生?」
「今は、そのことが一番怖いよ」
あれだけ視線を合わせてきていたのに、今は合わせようとしてもワイパーの動くフロントガラスに向いたまま。信号で止まっていても、彼はこちらを見向きもしなかった。