青い青い空
「世間狭っ。んで? 何を聞いたって?」そう言った彼が、夕食の準備に取りかかろうとする音が聞こえる。顔は、上げられなかった。
「宵くんが」
「俺が?」
「高校卒業したら、家を出て行くって」
「……ちょっと待て。あいつに言った覚えなんかねえぞ俺は」
そんな返しにも、どう反応すればいいかわからなくて。ただただテーブルの下で、膝の上で、指先をぎゅっと握り込んだ。
「父さん緊急手術が入ったから、今日は帰ってこられないってさ」
「連絡入ってた。お前にも来てた?」そう聞かれて、何とか首を振った。見る余裕なんかなかったと。
でも、その反応に彼はふっと笑った。「そっか」と、どこか少しだけ満足そうに。
「せっかくだし、今日は一緒に飯作らねえ? 父さんの分だけは俺が作るけど」
「……どうして?」
「強いて言うなら照れくさいから」
「え……?」
「面と向かって真面目腐った顔で話すようなことでもなけりゃ、辛気くせえ顔に言うことでもねえ」
「ご、ごめん」
「だからまあ、気楽に聞いてくれたら、それが一番俺にとってもありがてえんだけど」
「……ど、努力はする」