鈴村君の裏の顔

私が言ったその瞬間……
リビングの空気が、
ほんの少し、和らいだ。

その……はずだった。

隼人
「おい!」
「ここ、俺の隣り空いてる。」


望愛が俺の隣りに来るように
右側の椅子を引く。

するとほぼ同時に……

優希
「望愛ちゃん、」
「こっちも空いてるよ。」
「こっちに座りなよ。」


優希が、自分が座っている
反対側の左の椅子に手をかけた。

一瞬の沈黙。

望愛は、その光景を
ぽかんと見比べていた。

本当……この女……鈍感すぎる。



……え?
なに、この状況……?

私……どうしたら良いの!?

隼人君と優希君の
視線は静かにぶつかっていて
空気は、妙に張り詰めている。



隼人……お前はいつもいつも、
俺が最初に言おうとする事を
全部、先に望愛ちゃんに言うんだよ。

あぁ……本当……ムカつく。



翔太
「……じゃぁさ……」


翔太が、少し苦笑しながら口を挟む。


翔太
「三上さんは間に座れば?」


もう……本当こいつらめんどくせぇ。
好きな子、困らせてるようじゃ
まだまだだな……。
まぁ、仕事に支障が出ない程度なら
許せるか……。



結果、森下君が言った提案で
私は、隼人君と優希君の間に
座る事になった。

私は左右に、
それぞれ違う温度を感じながら、
小さく身を縮めて座る。

……不思議だよ……

なんで、二人ともこんなに近いの……?

私は首を傾げながらも、
深く考えることはできなかった。



望愛の横顔が、ふと俺の視界に入る。

柔らかい頬のライン。
少し緊張した唇。
長いまつ毛が影を落とす。

――その横顔から、
目を離せなかった。


それはきっと、俺だけてはなく
優希もそうだと確信している。


同じ瞬間、
同じ理由で望愛を盗み見していた。


……なんだよ。


こんな顔、反則だろ!

俺は奥歯を噛みしめる。

やっぱり……

簡単に、この気持ち譲れるわけない。

優希もきっと同じ事を静かに思って
いるはずだ。

望愛だけが、
俺らのその視線に気づかないまま。
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