鈴村君の裏の顔

翔太
「いただきます。」

翔太の声を合図に、
全員が一斉に箸を取る。


最初に反応したのは隆二だった。

隆二
「……これ、」
「普通に店レベルじゃん!」


翔太
「本当だ……これ美味い。」

翔太も頷きながら言う。

翔太
「最近、忙しくて帰りが遅くて」
「外食続いてたから、染みる。」

俺は、隆二と翔太が食べてる
肉じゃがを一口食べて
小さく息を吐いた。

隼人
「……悪くねぇ。」
「うまい。」

隼人君は
ぶっきらぼうな言い方だったけれど、
それが隼人君なりの評価だと、
私は分かった。

この人はぶっきらぼうだけれど、
その中にちゃんと優しさを
持ってる。


私はそんな彼に少し照れたように、
視線を落としたまま答える。


望愛
「ありがとうございます。」
「隼人君や、皆さんのお口に」
「合って良かったです。」


その様子を、
俺ははじっと見ていた。

優希
「望愛ちゃん!」


俺はいつもより近い距離で
名前を呼ぶ。

優希
「無理してない?」
「疲れてない?」

望愛
「だっ!大丈夫です!」

優希君!?
いつもより距離……近い!?

私は慌てて首を振る。

望愛
「普段から自炊してるので」
「料理作るのは結構慣れてます!」

優希
「そっか。」

優希君……今、
ほっとしたように微笑んだ。
優希君のテレビで観るクールな印象とは
裏腹にまるで、小学生の時と同じような
柔らかい笑顔を私に見せてくる。


俺と望愛ちゃんのやり取りを見て、
隼人が静かに口を挟んだ。


隼人
「優希……ちょっと」
「望愛との距離、近すぎ。」

優希
「近かったらなにか」
「問題でもあるの?」


優希は視線を逸らさない。


隼人
「気になっただけだ。」


優希
「ふーん。」


隼人は箸を置き、
望愛ちゃんの方を見て言う。


隼人
「仕事だからって、」
「全部一人でしようとするなよ?」
「ここは寮だ。」
「俺にちゃんと頼れ。」


望愛
「……はい。」

望愛ちゃんが照れながら
隼人に向けて短い返事をする。
そして俺の胸が小さくざわつく。


頼れ……か。

それ、俺にも頼って
ほしいんだけどな。
そんな事より………
俺……もっと望愛ちゃんの
……

優希
「ねえ!」
「話し、変わるんだけど……」

俺は、ほんの少しだけ身を乗り出した。

優希
「これかは、」
「望愛ちゃんの手料理」
「俺が一番に食べてもいい?」


また一瞬、リビングの空気が止まる。
優希……お前、何言ってんだよ!?

そんなの俺だって、一番に食いてぇよ。

隼人
「は?」
「何言ってんだよ。」

やっぱりすぐ、隼人は反応してくる。

優希
「冗談じゃないよ。」

そんな隼人を見ながら
俺は静かに言う。

優希
「望愛ちゃんの料理、俺、好きだから。」

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