鈴村君の裏の顔


「ひゃ……っ!!」

望愛小さな口から、
小さく声が漏れる。

「顔に出すぎ。」


低く、からかうように
隼人君は口に出す。


「安心しろ。」
「苦手って言われても、」
 「別に俺、傷ついてねぇけど?」


「ち、違っ……」


「でも……」

毛先を指に絡めたまま、
少しだけ真剣な目になる
隼人君がどこか色っぽく
見えて目が逸らせなくなる。


「俺の事苦手なのに、」
「ちゃんと心配はすんだな。」


そんな視線に、
私の鼓動が早まる。

ドドドドドっと心臓が早くなってる。
これ……なに!?

苦手なのバレたから、
私……動揺して可笑しくなった?


そりゃ、苦手だけど、
悪い人ではないし……
それに……最初は
”めっちゃくちゃ苦手”だった。
だけど……今はその苦手な糸の塊が
ほどけていってる気がする。



「……それは、普通に……」


「優しいな、お前。」


不意打ちの一言。

そして、毛先からそっと手を離し、
スマホを取り出す。


「安心しろ。」

画面を軽く操作しながら。


「今からマネージャー呼ぶ。」


さっきまでの甘さが、
少しだけ現実に戻る。

「迎えに来させるから、」
「問題なし。」

そう言って、
視線を再び望愛に戻す。


「だからお前は、」
「何も心配しなくていい。」


俺様な言い方なのに、
どこか優しい。

望愛は胸を押さえる。

……苦手、なのに……

なのに……

どうしてこんなに、
心臓がうるさいんだろう。

私はここにいてはいけないと
思い…………


「隼人君。」
「……おやすみなさい。」


そう小さく言って、
ドアへと逃げるように向かう。

「おう」
「またな、望愛。」

名前を呼ばれ、
さらに鼓動が跳ねる。

私……やっぱりおかしいと思う。



私は早歩きで自室まで行き、
玄関のドアを開ける。
ドアが閉まり、鍵の音が静かに響く
同時にさっきよりも心臓がドクドクと
鳴ってるのを必死に抑えようとした。




俺はしばらく、
閉まったエントランスのドアを見つめたまま、
小さく笑った。


苦手、ねぇ……。


スマホを耳に当てながら、
考えた。


それでも心配してくれるなら、
じゅうぶん。


夜の空気の中、
俺の表情は、
どこか楽しそうで自分でも
ニヤついてるがわかる。

――確実に、距離は縮んでいる。

絶対……俺の女にしたい。

そう、俺は澄み渡った夜空の下で
余韻に浸った。


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