鈴村君の裏の顔


俺と優希の間に、
張りつめた空気が流れる中、
マネージャーは静かに視線を隆二へ向けてた。

石田
「……なあ、隆二。」

隆二
「はい。」

石田
「この状況、どういうことだ?」

俺は一瞬だけ言葉に詰まり、
それから覚悟を決めたように
すぅーっと息を吐いた。

隆二
「……正直に話しますね。」



マネージャーの目をまっすぐ見て、
俺はゆっくりと言葉を選ぶ。
そう……自分が三人の関係性をみた
正直に思った事を。


隆二
「まず、隼人も優希も……」
「二人とも三上さんのこと、」
「好きです。」
「それはもう相当好きだと思います。」

マネージャーの眉間がわずかに動いた。

石田
「ほう……。」

俺はそのまま説明を続ける。


隆二
「優希は、小学生の頃、」
 「三上さんと同じクラスだったんです。」


石田
「……昔からの知り合いか。」

隆二
「はい。」
 「それどころか……」


俺は少しだけ声のトーンを落とした。


隆二
「三上さんは、」
「優希の初恋の相手です。」


マネージャーは腕を組み、
静かに頷いた。

石田
「……なるほど。」

俺は一拍置いて、
今度は隼人の方へちらりと視線を向ける。

隆二
「で、隼人の方は……」

少し苦笑してから、続けた。


隆二
「たぶんですけど、」
 「三上さんに初めて会った時から」
 「一目惚れみたいなもんだと思います。」

石田
「一目惚れ……か。」


隆二
「はい。」
 「本人は認めないでしょうけど、」
 「最初から距離の詰め方が異常でしたし。」



俺は肩をすくめて、話を続けた。

「気づいたら、2人とも」
 「もう引き返せないところまで」
 「行ってる感じです。」


説明を聞き終え、
マネージャーはしばらく黙り込んだ。

そして、深く息を吐く。

石田
「……つまり」

視線を隼人と優希に向けながら、
マネージャーは低く呟いた。

その間も、こちらの事は気にもせずに
二人で言い合っている。

石田
「二人とも、」
 「同じ一人の女の子に……」
「本気ってわけだな?」


俺は、マネージャーの問に
否定せずに頷いた。


隆二
「はい。しかも……」
「どっちも本気です。」

マネージャーは目を閉じ、
頭を左右にゆっくり振る。

石田
「……やっかいだな。」

けれど、その口調には、
怒りよりも理解が滲んでいた。

石田
「仕事と恋の境界線が、」
「一番揺れやすい時期だ。」


そう呟いたマネージャーの視線は、
まだ戻らない三上さんの方角へと
向けられていた。

静かに、嵐の気配を察するように。
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