鈴村君の裏の顔

そのまま片手でマスクを外し、
もう一方の手でキャップを取る。


優希君はマスクとキャップを外し
ふわりと風に揺れる黒髪と
はっきりした顔立ちが私と由佳の
目の前で露になる。

その瞬間……

由佳
「……っ!!!」

由佳が、完全に固まった。

ですよねー(笑)


由佳
「ちょっ……!!!!!」

由佳は今ままでとは声にならない叫び
を上げる。

由佳
「え!? え!?!?!」
「ちょ、待って待って待って!!」


由佳は両手で自分の口を押さえ、
足をばたばたさせる。
推しに会えるとこんな感じになる
由佳が可愛いくて、
ついホッコリとしてしまった。

由佳
「望愛!!ねぇ!!望愛!!」
「無理無理無理無理!!!」
「え、何!? 夢!? 現実!?」
「ちょっと私、今、推しと」
「同じ空気吸ってるの!?!?」


私は、慌てて由佳の肩を掴んだ。

望愛
「由佳! 落ち着いて!」
「声、大きい!」

由佳
「だって!!!」

由佳は半泣きで私を見る。

由佳
「だって優希君だよ!?」
「MOONの!?」
「画面の中の!?」
「生!!!」

優希君は少し困ったように笑って、
息を整えながら頭を下げた。


優希
「……驚かせてごめんね。」
「さっきは……俺の、」
「不注意で騒ぎになりそうになってしまって。」

その声だけで、由佳は胸を押さえた。

由佳
「……無理……声まで本物……」

顔を真っ赤にしながら、
由佳は優希君をまじまじと見つめる。

由佳
「あっ!そうじゃなくて。」
「い、いえ!!」
「こちらこそ!!」
「さっきは取り乱してすみません!!」


急に背筋を伸ばし、
由佳は深々と頭を下げた。


その様子を見て、
私は少し苦笑してから口を開いた。

望愛
「えっと……優希君」
「紹介するね。」


二人の間に立つようにして、
私はゆっくりと言う。

望愛
「私の親友の、佐々木由佳です。」

望愛
「で……こっちらが……」
「由佳、紹介しなくても」
「分かってるの通り……」

一瞬、私は言葉を探してから言う。

望愛
「MOONの、樋口優希君。」

由佳は、
何度も何度も頷いた。

由佳
「知ってます!!」
「もう、それはめちゃくちゃ!!」
「私、優希君全力推しなので!」

優希
「……はは。」
「ありがとう!」

優希君は照れたように目を細める。

優希
「よろしくね。」
「今日は完全オフなんだけど……。」

由佳
「よっ……よろしくです!」
「あっの!優希君!」
「オフでも輝きが隠せてません!!」


由佳は即答だった。


優希
「あはは、ありがとう。」

優希君は、由佳のテンションに


私は、少しだけ気まずそうに視線を逸らす。

……ちゃんと説明しないと。

望愛
「由佳、私がMOONの寮で」
「家政婦のバイトしてるのは」
「説明したよね。」

由佳は「うんうん」と頷く。

望愛
「でも、もう1つ言ってない事があって。」


由佳
「ん?なに?」


望愛
「……えっとね」

私は、言いづらそうに指先を絡めながら、
ゆっくりと言葉を選ぶ。

望愛
「優希君とは……実はね……」
「小学生の時、同じクラスだったの。」

由佳が、ぱちっと目を瞬かせる。

由佳
「え?そうだったの!?」

望愛
「うんでも、そのあとすぐ」
「優希君、東京に引っ越しちゃって……」

そこで一度、言葉を切る。

望愛
「だから、ずっと会ってなかったんだけど」

望愛は、少し困ったように笑った。

望愛
「家政婦のバイトを通して」
「再会、しちゃった流れなの。」

言いながら、
私は少し困ったように笑う。


望愛
「だけど……今日、大学まで来るなんて」
「私、思ってなかった。」
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