鈴村君の裏の顔
*望愛 side*
MOONの寮を出た瞬間、
ひんやりとした冬の空気が頬に触れた。
「はぁー寒っ。」
吐く息が白くなるのを見て、
ああ、本当に冬休みなんだ……と、
今さら実感する。
今日はもう家政婦の仕事も終わった。
この後、私が向かう場所はひとつ。
——るるぽーと。
クリスマスの飾り付けで彩られた
ショッピングモールは、
一歩足を踏み入れただけで、
浮き足立った空気に包まれていた。
クリスマスモード全開の
ショッピングモールってワクワクしちゃう。
……まずは、
みんなで交換するプレゼント用を買わなきゃ。
頭の中で、順番に顔を思い浮かべる。
森下君、宮部君、隼人君、優希君……
それから、由佳と、もう一人森下君の親友さん。
6人分。
誰が受け取っても困らないもの、
でもちゃんと「嬉しい」と思ってもらえるもの。
雑貨屋、インテリアショップ、文具店を
いくつか回って、私はようやく決めた。
・アロマキャンドル
・シンプルなマグカップ
・おしゃれな入浴剤セット
・小さな観葉植物
・ハンドクリームとタオルのセット
・デザイン性のあるコースター
……これなら、
誰が当たっても大丈夫だよね。
レジに並びながら、
ほっと胸を撫で下ろす。
次は……
優希君の、クリスマスプレゼント。
少しだけ、足取りが慎重になる。
“お試しの彼氏”。
その言葉が、
胸の奥で小さく引っかかっている。
アクセサリー売り場の前で、
立ち止まった。
今日の朝、首元にキスされた感触が、
一瞬だけよみがえって、頬が熱くなる。
私、何思い出しちゃってんの!
早く優希君のプレゼントを考えなきゃ。
……重すぎない、
でもちゃんと気持ちは伝わる物。
悩んで、悩んで、
私はシンプルなキーケースを選んだ。
色は、落ち着いたネイビー。
これなら……喜んでくれる、よね。
箱を受け取って、
カバンの中にそっとしまう。
その時だった……
……あれ。
ふと、別のショーケースに目が留まる。
腕時計……
無意識に、その前に足が止まっていた。
隼人……君。
名前を思い浮かべただけで、
胸が、きゅっと音を立てた気がした。
ステンレスのシンプルなデザイン。
派手じゃないのに、洗練されていて。
隼人君に、似合いそう。
……え?
自分の思考に、自分で驚く。
私、何考えてるの……!?
優希君と“お試し”で付き合ってるのに。
なのに、どうして……。
……個別で渡したい、なんて考えてんだろ。
頭では「ダメだよ」って言ってるのに、
手はもう、ケースを開いていた。
文字盤の色。
ベルトの質感。
どれが隼人くんの腕に合うか、
どんな服に合わせるか。
私は考えすぎなくらい、真剣に選んでいた。
本気で喜んで欲しいなんて思っていた
事に、この時は自分が一番気付いていなかった。
結局、
私はその腕時計を買ってしまった。
袋を受け取った瞬間、
胸が少しだけ、ドキドキとする。
……なんで、こんな気持ちになるんだろ。
全部、無事に買い終えて、
私は次の目的を思い出す。