愛する人とは結婚しません!

2 誕生晩餐会

そして、誕生日晩餐会が始まった。

私はパーティーホールに螺旋階段から降りた。
みんなの視線が私に集中する。

ジェッツ男爵家は銀山を掘り当て、父母の代で新興貴族として男爵の仲間入りを果たしたのだ。
銀山は衰える気配もなく、割と有名な貴族となった。

貴族の中には、血統からか、高い魔力を持つ者が居るが、私はその1人では無い。
普通は微量でも魔力を保有するのだが…

私には魔力がない。
全然無いのだ。
《《賢女》》に分類される、珍しい人間だった。

賢女とは何か?

聖女は癒しの力や聖なる力で人を癒し、魔物を浄化するのに対し、賢女は魔瘴を癒す働きがある。
厳密に言うと、魔の瘴気を吸い取ってしまうのだ。
これは、全く魔力が無い為にできる芸当だった。

ただし、私が賢女である事は誰も知らない…
魔力測定装置しか…

さて、私はパーティーホールに降りると、優雅に一礼して、こう言った。

「お集まりの皆様。
今日は私の19歳の誕生日となります。
ここに集まった皆様とは今日が初対面の方もいらっしゃるでしょう…
しかし、私はここに来て下さった全ての方々のこれからの人生の幸せを祈ります。
それが、どんなに小さな祈りだとしても…

皆様、良い時間を。
楽しんでくださいませ。」

そして、オーケストラの音楽が鳴り響いた。

「エイリス様、ジューク=ビクターンと申します。
最近は図書館でお見かけしませんので、心配しておりました。
お変わりはありませんか?」

彼の笑みは春の木漏れ日を思わせた…
美しく、穏やかで、心に染み渡ってくる…

だけど、私は彼につれない態度を取らなくてはならなかった。

「えぇ、お気遣いなく…
ありがとうございます。
ビクターン伯爵、楽しんでいかれてください。
少し失礼しますわ…」

私は精一杯の気丈さでそう言った。

小走りにテラスに向かう。

「エイリス様…」

そう呼び止められて、足を止めた。

彼はラルフ=イェーガー侯爵様。
ジューク様と対照的で、秋の少し肌寒い空を思わせる人だ。
晴天だが、どこか寂しい。
そんな人だと思う。

「そんなに急いでどこに行かれるのですか?」

「いえ、飲みすぎたので少し風にあたりに行きたくて…」

「…俺もです。
少し飲み過ぎたようです。」

「そ、そう…
では、一緒にテラスに…?」

「是非…」

彼は確か…
私に求婚してくる1人、よね…?

ジューク様が光を操るならば、ラルフ様は闇。
ジューク様同様に高い魔力を持っているけれど…

何とも言えない…

ジューク様以外から婚約者を選ぶ事が、こんなにも辛いなんて…
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