ライバルがユーレイなんて聞いてない!


 * * *


 気がついた時、オレは何も覚えていなかった。

 ただ、交差点に一人で立っていた。
 いや、立っていたのかはわからない。

 オレには足がなかった。
 体も透明で透けていた。

 ぼんやり空から交差点を見下ろしていて、自分が死んだことだけは理解できた。


『オレは、誰だっけ……?』


 自分の名前が思い出せない。

 どうしてここにいるのかも、なぜ自分が死んでしまったのかもわからない。

 ただ、何か大切なことまで忘れてしまっている気がする。
 思い出そうにも、自分に関することが何も思い出せなかった。


『誰か、オレのこと知らない?』


 通りすがる人たちにたずねても、誰もオレの姿が見えていなかった。
 ユーレイなんだから当然か。

 どうやらオレはここから動けないらしく、交差点の周辺が見えない壁に囲まれて閉じ込められてしまったようだ。
 だからどこにも行けず、交差点にしばりつけられたまま通りすがる人たちを見つめる。

 時々交差点に花をたむけ、手を合わせる人がいた。

 この花は、オレ宛てなのかな。

 この中に、オレのこと知ってる人はいるのかな。
 だけど、誰もオレのことが見えないからわからない。

 ねぇ、誰かオレのこと教えてよ。
 オレは誰? なぜここにいるの?

 どうして成仏できないんだろう……。


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