ハリボテロミオの夏の夢
「あ、玲央、おはよう!って、何お前イメチェン?」
「はは……っ。ちょっとね」
稽古場に入るや否や、汐恩に話しかけられて、ヘラっと笑う。
……うまく笑えているだろうか。
「へー、お前がメガネ外してるの珍しいな」
「け、今朝起きたら机から落として、そのままふんずけちゃってさ」
「まじか!大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫」
ありがとう。と、僕はなんとか笑顔を作って誤魔化す。
けど、
「なあなあ、そういえば知ってるか?ついさっき、どっかのイケメンが朱里にいきなり告ったって!」
「へ、へぇ……」
やっぱり話題は、朱里さんに告白した人物のことに変わった。
そりゃそうだ。
あんな告白なんかしたら、すぐ噂になるに決まってる。
「だ、誰だろうね、そんな命知らず」
「それがわかんねぇの。うちの制服着てたらしいけど、誰もあんなイケメン見たことねぇっていうんだよな……」
「そ……ソウナンダァ」
変に声が裏返る。
でも、これだけ噂になっているのに、僕の名前が出ていないということは、誰もあれが僕だって気づいていないってことだ。
これなら、なんとか切り抜けられる。
「しかも間髪入れずにフラれたって!やばいよなぁ!どんなメンタルしてたらそんなことできるんだよ!」
「……本当だよ」
その点に関しては、激しく同意だ。
まじで何をどうやったら、あんな自信が身につくんだろう。
本当に、そこだけは羨ましい。
「おい、みんな!」
突然、稽古場にいるみんなに向かって呼びかけたのは、蘭くんだった。
「さっき変な奴が来てたが、気にするなよ!大会まであと3日しかないんだ!大会に集中しよう!!!」
「そうだね!蘭くんの言う通りだと思う!みんな、もう一回気を引き締めていこう!!!」
「はい!」
蘭くんのあとについで、朱里さんもみんなに向かって呼びかける。
その呼びかけに、部員みんなが返事をした。
少しだけふわっとしていた空気が、一気にぐっと引き締まる。
やっぱり、この二人はすごい。
「さ、練習始めるぞ!」
蘭くんに促されて、みんなそれぞれ持ち場へ向かった。
「……あの二人付き合ってんのかなぁ」
「……」
舞台裏に向かう途中で、ぽろっと、汐恩がつぶやいた。
付き合っていると噂されている二人だ。本当であってもおかしくない。
チラリと、役者組の方を見れば、蘭くんと朱里さんが楽しそうに話しているのが見えた。
側から見ても、とってもお似合いの二人だ。
そこに、僕のいられる場所なんかない。
……ないんだよ。